ALOS衛星対応に向けて、地殻変動検出を目的としたLバンド干渉合成開口レーダー(SAR)の手法の改良と応用を行った。 (1)干渉SARの高精度化 従来の位相情報を直接用いた軌道推定法では、位相に含まれる大気遅延の効果が悪影響を及ぼす恐れがある。そこで画像マッチングによる座標誤差の最小化の手法を応用し、正確に軌道を再推定できるようにした。また、SAR画像とDEM(数値地形モデル)とのマッチングにおいて、数値地形図画像(地理的特徴)の張り合わせによる手法を新たに組み込んだ。これにより従来対応点が取れなかった平地においてマッチングの精度が向上した。 (2)大気遅延誤差の気象学的な補正 高精度な軌道再推定が成功したJERS-1衛星Lバンドデータに対して干渉SAR処理を行い、大気遅延による特徴的な位相パターンを抽出した。この位相パターンには(1)標高に比例した擬似地形縞と(2)山岳波などの気象現象に伴う複雑な位相模様とがある。特に(2)に関して、ラジオゾンデデータを用いた大気運動の数値計算を行い、大気遅延量を求めて補正する新しい手法を開発した。富士山箱根周辺に特徴的に見られる山岳波の影響が明らかになった。 (3)干渉SARの応用 雲仙普賢岳、阿蘇山、諏訪之瀬島にJERS-1干渉SARの手法を応用し、地殻変動の高精度な検出を試みた。このうち特に(過去に解析が行われていない)諏訪之瀬島の解析結果について新たな知見を得た。明治の大噴火による堆積物が広く覆うことにより干渉性がかなりよいこと、1993-96年にかけて山頂カルデラ外縁部に地殻変動が確認できることが明らかになった。しかし、島の地形的特徴から、フォアショートニングの影響が強く狭い島で正確に軌道を推定する新たな手法の確立が不可欠であることが分かった。
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