地殻変動検出を目的とした干渉合成開口レーダー(InSAR)の手法改良と応用を行った。 (1)地殻変動のシミュレーションプログラムの開発 弾性体内部の有限矩形断層の運動による地表面変位と視線距離変位の理論計算プログラムを作成した。計算結果を地図座標系で出力できるように工夫した。1997年3月の鹿児島県北西部地震のInSAR結果を用いた断層モデル計算に応用した。また、複数の断層運動の結果を合成できるようにも改良した。 (2)DEM(数値標高モデル)を用いない新しい干渉SAR解析法の開発 インドネシア・メラピ火山をテストサイトとして、4パス干渉法の開発を行った(JERS-1 データ)。まず大きな地殻変動のない期間(最小44日間隔)のSARデータを干渉させた後にPhase Unwrappingを行い、さらにオルソ化を施してDEMを作成した。続いて噴火時期を挟む210日間隔のデータによる差分干渉処理に適用した。DEMの標高誤差は約20mで、地殻変動の検出誤差としては2〜3cmに相当することが分かった。ただし、所々大きなUnwrapping誤差が生じており、今後の課題となった。高度なフィルター処理が必要である。 (3)火山性地殻変動の検出人の応用(JERS-1及びRADARSATデータを使用) (1)阿蘇山、くじゅう連山周辺の地殻変動の検出:1995年10月の星生山噴火に伴う明瞭な地殻の収縮運動が1998年以降も継続していることを明らかにした。八丁原地熱地帯の収縮変動も検出できた。阿蘇外輪山の地形に起因すると思われる興味深い気象の影響を発見した。今後の課題に加えたい。 (2)桜島周辺の地殻変動の検出:長期間間隔(3〜5年)の干渉処理を行い、姶良カルデラ全体の広城的な隆起、及び桜島の北側斜面の局所的な隆起変動を検出した。後者に関して、最大変位量からマグマ溜まりの体積変化率を推定した。
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