非潮汐性の長周期海洋変動に対する固体地球の荷重応答を計算するシステムを構築した。まず、調査研究旅費を用い、海洋の質量移動を記述するデータベースを調査を行った。その結果、NASA JPLで開発された海洋大循環モデルのアウトプット(ECCO2)のうち、海底圧力変動データが適当であると判断した。このデータベースは、生の海面局度計データと異なり、質量変化に寄与しないバロクリニック成分を含んでいないため、本研究の目的に適する。1993年から2002年の10年間のデータを解析した。まず海底圧力の10年間の平均場を求め、この平均場からの変動成分を海水の高さの変動に変換し、1日毎に1度グリッド化した。次に毎日の海水面の変動場を球面調和関数の180次まで展開し、その展開係数に荷重ラブ数を作用させることによって、荷重変位のマップを作成した。全体で3657日分の全球マップを作成した。この荷重マップ群を用いれば、地球上の任意の点について非潮汐性海洋変動による荷重変位の時系列を得ることが出来る。例として、アンテナの年周変位をmmの精度で予測する必要があるVERA計画の観測点のうち、水沢・小笠原・石垣の各局の変位の時系列を調べたところ、それぞれ最大で、±3.6mm、±2.9mm、±2.2mmの変動をすることが予測された。島嶼の小笠原・石垣よりも内陸に位置する水沢の変位が一番大きかったのは予想外であったが、これは日本海の海洋変動の影響が予想以上に大きかったためである。今後は、GPS等独立な観測との比較による検証を行った後、成果をまとめ学術雑誌に公表し、荷重変位マップはウェブ上で一般に公開する予定である。
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