平成14年度は人工電流源装置およびケーブルウィンチを海洋科学技術センター調査船「かいれい」に搭載し、実海域で人工電流の通電試験を行った。実海域試験はKR02-14航海においてマリアナトラフ中軸部付近(水深約3500m)で実施された。本実験でもっとも問題となるのはケーブルウィンチの耐電流特性であった。従って準備段階として、ケーブルウィンチのうちで、コネクターなどを大電流通電可能なものへ換装した。さらに、通電時のウィンチドラム内部での温度上昇予測値およびケーブル絶縁体の温度特性に基づいて、同ケーブルウィンチに対する最大通電可能電流値を見積もった。実海域試験においては、ウィンチドラム内部にプローブ型温度計を装着して温度を測定することで、最大電流値の予測の妥当性を検討した。その結果、予測最大電流値を通電した場合でもケーブルウィンチ内部の温度上昇は大幅に小さいことがわかり、本システムを用いることで、人工電磁探査を行うのに十分な大電流を海中に通電可能であることが判明した。結果としては、ダイポール長4000mの人工ソースに対して、約10Aの電流を10時間連続して通電することができた。今回の実海域試験では人工電流装置側に制限があったため、10Aが上限値であったが今後はより大電流での通電を実施する予定である。 また平成14年度には熊本県三角半島にて、平成15年度に実施予定の人道電流受信装置の実海域試験地域を実地見学した。本地域は熊本大学によって海底電気探査が行われており、本研究で新規開発を行う人工電磁探査システムの試験海域としては最適である。さらに熊本大学での研究打ち合わせによって、本地域の比抵抗構造は、陸からの淡水と海からの海水の混合によって支配されており、潮汐によって比抵抗構造が変化することが分かった(この結果は未発表。現在熊本大学で研究論文を作成中)。このため平成15年度の海域試験では、単なる機器の動作試験のみならず、時間変動する比抵抗構造の検出が本システムで可能かどうかの議論も行う予定となった。
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