昨年度に行なった、冬季成層圏循環の季節内変動に対する赤道準二年周期振動(QBO)の影響を調べるパラメータスイープ実験の結果をさらに解析して、時間平均場だけでなく成層圏突然昇温現象の起こり方におけるQBO位相間の差異についての知見を得た。観測的事実から知られているとおり、赤道下部成層圏が東風相の場合のほうが、西風相の場合にくらべて極夜ジェットが弱く突然昇温が頻繁に起こっていた。赤道下部成層圏の東西風に与える強制の強さをパラメータとして変えたことで、西風相の西風が非常に強い場合にも東風相と同様の傾向が見られることがわかった。長時間積分によって多数の昇温イベントを得ることができ(最少の西風相実験でも50回以上)、それらをコンポジットすることで、昇温が起こる頻度だけでなく起こった際の特徴の差異についても議論することができた。それによると西風相の場合に起こる突然昇温のほうが何日もかけてゆっくり温度が上がる傾向にあった。東風相・西風相合わせても20回前後の昇温イベントしか得られない観測データとは違い、最少でも50回以上というサンプル数のおかげで、統計的にも有意な議論ができた。 この結果を論文にまとめて投稿したものが、改訂作業を経て、つい先日印刷へまわったところである。なお、研究発表の項で雑誌論文に挙げた、昨年出版されたものは、この研究の下地となった、観測データの解析結果である。 その後、この実験結果から得られた突然昇温に関する知見をもとに、観測データの見直しを進めたが、結果をまとめるには到っていない。 現在は、赤道東西風への強制の強さではなく東風・西風の位相をパラメータとして変えた実験を行ない、得られたデータを解析し始めているところである。
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