研究概要 |
本年度の当初は,海洋科学技術センター所有の親測船「みらい」により取得された1999〜2001年過去3年間の観測データの収集・整理にあたった.さらに,本年度11-12月の約40日間,西太平洋赤道海域における「みらい」観測航海に参加し,現地での観測データの取得にあたった.また,観測時期に対応した気象衛星「ひまわり」のデータ収集を行なった.それらのデータを様々な角度から解析することから研究を進めた.すなわち,ラジオゾンデデータにより大気の鉛直構造の解析を解析し,対流圏における大気の安定度や水蒸気の時間変動について詳細に調べた.また,「ひまわり」データやシーロメータデータにより雲の解析を行い,積雲・雄大積雲・積乱雲といった積雲対流活動と大気の鉛直構造の変動との関係について調べた.その結果,対流圏の水蒸気変動と積雲活動とが密接に関連していることが明らかとなった.観測事実の解析から得られた結果を検証する手段として,本研究では数値実験を行なうこととした.用いた数値モデルは,雲解像モデルである.数値モデルによる積雲対流の計算を開始する前に,モデル内の格子スケール以下の乱れに関するパラメタリゼーション(乱流モデル)の妥当性について数値実験によって検討を行なった.この計算結果については国内・国外の学会で発表を行った.次に,熱帯の積雲対流と環境場との相互作用に注目して数値実験を行なった(安定度や水蒸気プロファイルに対する積雲活動の応答を調べる).その結果,観測データの解析で示されたことを裏付ける計算結果が得られた.特に,対流圏中・上層の相対湿度の大小によって,雄大積雲や積乱雲といった背の高い積雲対流の発達が大きく影響を受けることが示された.数値実験によって得られた成果については,国内の学会・シンポジウムで発表を行なった.
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