研究概要 |
T21L52のVenus-like AGCM(CCSR/NIES AGCM5.6)による数値実験を行い、その成果は、Geophysical Research Letters(Vol.30,No.9,doi:10.1029/2003GL016924,2003)に発表された。過去のVenus-like AGCMの研究では、スーパーローテーションを再現していないにもかかわらず、GRWシナリオ(Gierasch機構の大きな水平渦粘性は順圧不安定による赤道向き角運動量輸送に対応する)を主張していた。この研究では、スーパーローテーションを再現した上で、Gierasch機構において順圧波だけでなく様々な擾乱が重要であることを示した。また、赤道域では、高位相速度の擾乱も再現され、その役割についても、詳しく調べた。以上より、金星のスーパーローテーションの全体像を提案することができた。 現在、より現実的な非断熱加熱分布を与えた条件で実験中である。この場合、位相速度の遅い波の寄与が大きくなる。この研究の一部は、日本惑星科学会誌(遊星人,Vol.12,No.4,243-247,2003)で紹介されている。 上記の力学研究に加えて、金星大気のエアロゾルの物質循環モデルを改良するために、モーメント法の有用性を凝集過程について試験した(Journal of Aerosol Research(エアロゾル研究),Vol.19,No.1,41-49,2004)。その成果を踏まえて、モーメント法を採用した緯度-高度2次元の硫黄循環(H_2SO_4,SO_2,H_2O,エアロゾル)モデルを開発中である。下層大気の高濃度SO_2は再現されないが、それ以外の成分はおおむね観測と似た値を示した(Proc.36th Lunar & planetary sympo.,ISAS,2003)。
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