研究概要 |
本研究は,衝撃波加熱モデルに基づいてコンドリュールの成因の解明を試みるものである.計画は3カ年にわたるものであるが,その初年度の平成14年度には,コンドリュールの形成に関わる物理過程を出来るだけ正確に扱うが空間次元は1次元もしくは2次元とした解析を行った. 今年度行った解析において正確に考慮した物理過程は,衝撃波ガスの化学反応,コンドリュール前駆体粒子からの蒸発,加熱を受けたダスト粒子の結晶化,および,溶融粒子の変形とその内部流である.これらの過程を正確に考慮することにより,以下のようなことが明らかになってきた.(1)コンドリュールを形成するような衝撃波においては,ガス組成も一部変化する.これは,原始惑星系円盤や彗星の観測から,衝撃波加熱モデルの可否を判定するデータが得られる可能性を示唆している.(2)加熱を受けたダストが蒸発することにより,形成されるコンドリュールのサイズは,その前駆体のサイズよりも一般に小さくなる.しかも,サイズ減少の割合はサイズが元々小さい粒子ほど大きいため,ある特徴的なサイズ以下のコンドリュールは形成されない.この特徴的サイズはおよそ1-10μmと見積もられたが,この値は,実際のコンドリュールに見られるサイズの下限とほぼ一致している.(3)衝撃波加熱により,コンドリュールにはならなくても,結晶化されるダスト粒子があることがわかった.このことは,彗星や原始惑星系円盤,AGB星の周囲などに見られる結晶化ダスト粒子の結晶化機構として,衝撃波加熱現象が有力な候補であることを示唆する.(4)溶融したダスト粒子は,衝撃波ガスによる圧力によって変形し,またその内部に流れが励起される.この流れは極めて速いので,その内部は効率よく一様化されることがわかった. 以上の成果は,近々,論文として発表する予定である.
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