昨年度開発した単周波GPS受信機を用いて、GPS衛星からの測位電波のL1波の電波強度を50Hzでサンプリングし、GPS電波の電離圏の擾乱構造による影響を測定した。長期間の連続・無人観測を可能にするためのシステム作りを進めた。そして、5月のオーストラリアにおける短期間の観測を挟み、京都において連続観測を行った。そして、2004年1月以降は滋賀県信楽町に移設し、長期間継続観測のための観測体制を構築した。この間、データ処理システムの開発も進め、50Hzの測定データの処理と、その一次データから電波の変動の状態を示す指数を算出するプログラムの整備を進めた。既存メーカーのシンチレーション・モニターによる観測データとの比較も進め、感度においては、同程度かそれ以上の受信システムになっている事を確認した。ただ、機器内部に起因すると考えられる雑音が時折発生する事が課題として明らかになった。この雑音は、その変動の特性から、データの処理段階において、自然現象による変動と判別する事が可能である。1年以上の観測を進める間に、2003年10月末から11月初めの大規模な地磁気擾乱時において、日本の中央部で大きなGPS電波の変動を観測した。これは、地磁気擾乱によって、通常は静穏な中緯度電離圏に電子密度の擾乱が起こされたため、GPS電波のシンチレーションを起こした物と考えられる。この現象はプラズマ・バブルやMSTIDと異なり、従来には予想されていなかった形で引き起こされた衛星-地上間電波のシンチレーションであり、当システムで観測されたGPS電波シンチレーションのデータをもとに論文を作成中である。観測システム構築とそれによって得られた観測結果については、2003年11月の地球電磁気・地球惑星圏学会及びその他の研究会において報告を行った。
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