本研究では、人工衛星近傍のプラズマ電磁環境を精密に再現することができる3次元のプラズマ電磁粒子コードの開発を行った。衛星の形状をモデルとして正確に扱うことを可能にするためには、まず電磁界を扱う空間格子として非構造4面体要素を用いて空間を離散化する。それをマックスウェル方程式に適用し電磁界の時間発展を計算する。さらに衛星近傍のプラズマの挙動を正確にモデル化するためには、プラズマを粒子として取り扱い、上記の電磁界によって与えられるローレンツ力を考慮した運動方程式を個々の粒子について解き進める。さらに、プラズマ粒子の運動によって発生する空間電荷や、電流密度をマックスウェル方程式に反映させることにより自己無撞着(self-consistent)なシミュレーションコードを完成する。 本年度は、可能な限り現実的なモデルを取り扱うことを目標とし、衛星形状のモデル構築および大規模3次元シミュレーションコードの開発、最適化を行った。3次元CADを使用し、球プローブの非構造格子モデルを作成し実験を行う一方で、地球シミュレータを使用した大規模3次元シミュレーションコードの最適化を行った。大規模3次元シミュレーションコードは、1000×1000×1000グリッドのモデルを扱うことが可能になり、静止衛星軌道上の衛星を扱う場合10km立方の空間をモデル化することが可能になった。非構造シミュレーションコードでは、球プローブモデルをおよそ1万節点の4面体要素でモデル化し、実験を行った。今後、理論計算との比較を行い、シミュレーション精度の評価を行う予定である。
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