固有磁場を持つ惑星では、磁気圏内で起こったプラズマ現象によって加速・加熱されたプラズマ粒子の一部が磁力線沿いに惑星に向かって降り込んでゆくと考えられる。惑星に希薄な大気しか存在しない場合、この降り込み粒子は惑星表面に直接降り注ぐことになる。そのため、惑星表面からは表面を構成する粒子の一部がたたき出される(スパッタリング)こととなる。これらのスパッターされた粒子を撮像観測すると、磁気圏内で起きたプラズマ現象の空間的広がりや時間変化などの情報が得られると考えられている。しかし、スパッターされる粒子のほとんどは中性粒子であり、その撮像観測技術には未だ問題点が残されている。本研究の目的はスパッター粒子を主なターゲットとした高速中性粒子分析器を開発することである。 本年度はセンサー形状を計算機シミュレーションを用いて最適化した。また、高速中性粒子の電離に用いる表面の特性を取得した。本計測器では高感度でありながら、光子・プラズマ粒子等のノイズ成分を十分除去し、さらに角度分解能・質量分解能を落とさないことが重要である。質量分解には永久磁石を用いることを考えているが、広いエネルギー範囲に対して質量分解能を維持するような工夫をした。また、光子除去に関しては電場を用いて粒子軌道を何度も偏向し、直進する光子を除去できるような電極配置とした。 高速中性粒子は一度観測器内で電離し、その後電場・磁場を用いて分析される。電離には表面との相互作用を用いる予定である。したがって、中性粒子を表面にすれすれの角度で入射させることになるが、その際、反射粒子の角度分散と反射率が問題となる。角度分散を抑え、反射率を上げるためには表面をできるだけフラットにすることが重要である。このことから、本年度は極めて表面がフラットな市販のシリコンウェハーを用い、実際に粒子ビームを照射し、その反射特性を得た。
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