研究概要 |
シュードタキライトとは、隕石衝突や地震時のように岩石が高速摩擦剪断されるときに発生する摩擦熱によって母岩が溶融・急冷して生成される岩脈状の岩石である。多くのシュードタキライトは母岩に比べてより磁性鉱物に富み、安定な残留磁化を示すことがこれまでに知られている。たとえ母岩がイルメナイト系列の花崗岩であっても、その溶融物は高い磁気特性を示すことが、最近の高速摩擦実験で実証されている(Nakamura et al.,2002)。ネールの熱残留磁化理論では磁性鉱物が冷却する際、周囲の磁場を熱残留磁化として取り込む。したがって、巨大地震や隕石衝突によって形成されたシュードタキライトの残留磁化は、当時の地球磁場強度を保持している可能性がある。そこで本研究では、隕石孔周辺のシュードタキライトの古地磁気強度推定から隕石衝撃にともなうプラズマ磁場生成仮説の検証をおこなうことを目的としている。以下は初年度の研究成果である。 カナダ・サドバリー隕石孔周辺から予察的に採集されたシュードタキライト(形成年代はAr-Ar年代測定法から1850Ma)を用いて、東京工業大学・綱川研究室においてテリエ法による、古地球磁場強度推定を行った。これまでに3試料の古地球磁場強度推定をおこなっている。東北大学でも購入した熱消磁電気炉を用いて実験を開始している。また、シュードタキライトの反射電子像観察から、高温酸化を示唆するイルメナイトラメラが観察された。また測定試料の砕片の熱磁気分析を行った結果、キュリー点温度がほぼ580℃を示していたことから、サンプルの磁化を担っている鉱物は磁鉄鉱であると結論でき、さらにヒステレシス特性パラメータは単磁区〜擬似単磁区領域を示していた。PTRMテストに合格した試料のNRM-TRMダイアグラムの直線部分から25μT程度の古地磁気強度が得られた。統計的に信頼できるほど多くのデータを得ていないが、予察的に当時の地磁気双極子モーメントを求めてみると、3.8×10^22Am^2の値を得た。
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