前年度までのパイロット試料を用いた古地球磁場強度測定の結果では、18億5千万年前の古地球磁場強度が現在の半分程度の強度しか示さないことを予察的に示した。この結果は、初期地球の地球磁場強度変遷史において著しくデータが不足している原生代の地球磁場強度を提供する。しかし測定試料が少なかったため、18億5千万年前の地球磁場強度が弱かったという作業仮説を立てるに過ぎなかった。そこで、今年度はカナダ・サドバリー隕石孔に赴き、隕石クレーター構造の野外調査とさらなるシュードタキライト試料の系統的な採集を2003年9月23日から26日までの4日間、申請の外国調査旅費を使用しておこなった。採集した試料は、クレーター構造から離れる方向に50kmの範囲から約3km間隔で17地点20試料を採集した。これらの試料からそれぞれ2〜3本のコア試料を作成し、最終的に測定用サンプルを115個得た。現在、これらのサンプルの古地球磁場強度測定を前年度の科学研究費で購入した夏原技研社製熱消磁器と現有のスピナー磁力計を用いて、テリエ法にもとづいた古地球磁場強度推定実験を実施中である。これまでに得られた結果は予察結果とほぼ一致し、26億年前に内核にともなって磁場強度が増大し、その後7億年が経過したのち、地球磁場が自発的に減衰したという作業仮説をサポートしている。一方、クレーター構造から離れるように系統的に採集したシュードタキライトの自然残留磁化強度を測定した結果、その強度が30kmより離れると弱まることを見出した。今後、この距離に伴う残留磁化強度変化と電子顕微鏡観察による岩石微紬構造変化との関係を解明していく予定である。 上記したシュードタキライトにもとづく原生代の古地球磁場強度についての結果は、2003年度アメリカ地質学会秋季大会において口頭発表を行った。
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