本年度は、振動流下で、貧砂状況での砂床形態を実験的に調べた。貧砂状況とは移動可能な砕屑物の量が十分でなく、基盤が部分的に露出するような状況を指す。実験にあたっては、あらかじめ小量の砂を限定された領域に散布し、表面波を発生させることにより、底面の砂に振動流を作用させた。その結果、従来振動流では発生しないと考えられていたbarchan(三日月型地形)が発生した。実験のbarchanは数センチ程度のリップル・サイズであった。Barchanは、もともとは孤立砂丘の典型として古くから知られており、沙漠以外にも海底や火星表面などでも多く見つかっている。Barchanは一つ一つは孤立しているが、通常同時に複数発生する。実験においてもバルハンは同時に多数発生し、個々の地形の類似性だけでなく、集団としてとらえた場合にも自然現象をよく再現していた。実験の振動流は表面波を起源としているので、時間平均をとると物質輸送が起きる。この輸送の向きがバルハンの向きを決定する。すなわち、表面波の進行方向へと、barchanの三日月の尖端を向ける。そして、この向きにbarchanはゆっくり移動する。同一水理条件においてbarchanは、クレストの高さに反比例する速度で移動することが分かった。この結果はフィールド調査の報告と調和的である。形状については、実験のbarchanと、これまで報告されている沙漠のbarchanとで相違があった。これの違いを定量化するためのパラメータを定義し議論した。結論を要約すると、実験の振動水流下で発生したbarchanの形状は、沙漠のbarchanに比べて相対的に、ホーンの部分(三日月の角)が短く、ボディーの部分が長いことが明らかとなった。一方、野外の水中barchanの報告例の中には、本実験のものと似た形状のものがあり、これらは従来一方向流れによると解釈されてきたが、波浪の影響が示唆される。
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