研究概要 |
平成14年度は,有珠山および三宅島で2000年に実際に発生した水蒸気爆発およびマグマ水蒸気爆発を題材に,研究課題に取り組んだ. 有珠山2000年噴火については、3月31日に発生したマグマ水蒸気爆発と,4月1日から7日の期間の水蒸気爆発それぞれについて推移を構築し,これらと火砕堆積物の産状の特徴を対応させた.その結果,3月31日のマグマ水蒸気爆発では,噴煙から降下堆積する降下火砕堆積物だけでなく,上昇する噴煙の一部が崩壊することによって火砕サージが発生し,噴火当時の風向とは関係のない方向にも粗粒な火砕物を堆積させた.4月1日〜7日の噴火は,最初に泥水からなるコックステールジェットが噴出し,その後火砕物を大量に含む黒色プリュームが数分〜数10分継続して上昇するというパターンが認められた.コックステールジェットは火口近傍に大量の淘汰の悪い火砕物を堆積させ,火砕丘を形成するが,黒色プリュームは広い範囲に火砕物を飛散させる傾向があり,噴火様式の違いが火砕堆積物の分布様式に大きく影響を与えるという結論が得られた. 三宅島2000年噴火については,2000年8月29日未明に発生した火砕流様の現象に着目し,映像記録と火砕堆積物の産状との対応を検討した.映像記録から,8月29日未明の噴火によって発生した火砕流様の現象は,噴煙の一部もしくは全体が崩壊し,その崩壊物がカルデラ壁の外側にあふれ出たことによって発生した.噴出源に近いカルデラの南麓には火砕流堆積物に特有の淘汰の悪い谷埋め性の火砕堆積物が分布するが,カルデラの北側では,カルデラ縁でも谷埋め性堆積物は認められない.これは,深くえぐれられたカルデラの中に粗粒な火砕物のほとんどが落ち込んでしまい,北麓に濃密な火砕物の流れが到達しなかったためと推定される.つまり,カルデラの存在が,結果的に火砕流の被害を小さくした可能性がある.
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