研究概要 |
平成15年度は,ODP Leg 199で得られた試料のうちSite1216のコアを対象として研究を行い,以下の結果を得た。 堆積物の全岩化学分析結果について ここでは,主成分元素であり,底層水の酸化還元環境と密接に関係するFeとMn濃度についてのみ述べる。これら両元素の濃度はSite1216を通して,系統的に変化している。Fe, Mnそれぞれ浅部で4.7%,1%程度であったものが,深度が増すにつれて濃度が増加し,12%,3.4%なる。Mn/Feは0.20〜0.34の範囲におさまり,コアを通してほぼ一定であった。 マイクロマンガンノジュールについて 昨年度に引き続き,堆積物からのマイクロノジュール抽出法について検討を加えた。その結果,25μm径のナイロンメッシュとおよびネオジム磁石を併用することにより,比較的容易にマイクロノジュールが濃縮できることが分かった。また,マイクロノジュールはコアの上部ほど大きく(最大2mm),徐々に細粒となり30m以深では最大0.1mm程度となった。上の濃度の結果と比較すると,コア上位の低Mn濃度部分でマイクロノジュール径は大きく,下位の高Mn濃度部分でマイクロノジュール径は小さくなることが明らかとなった。 古海洋学的な位置づけ 船上で得られた年代決定の結果から判断すると,径の小さなマイクロノジュールの分布するMn濃集域は,南極底層水生成以前の中期始新系にあたる。今後,鉱物分析などより,Mn濃集機構を明らかにする必要があるが,従来の「南極底層水侵入によりマンガン酸化物が生成されはじめた」とする視点が見直される可能性がある。
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