研究概要 |
福岡県北九州市一帯に分布する第三系芦屋層群の浅海堆積物と生痕ファブリックの観察を行い,Rosselia socialisあるいはPiscichnus waitemataによって特徴づけられる生痕化石群集を見いだした. 千葉県木更津市周辺に露出する下総層群浅海堆積物の野外調査を行い,埋在ウニ類の移動摂食痕と考えられる生痕化石Bichordites monastiriensisに関するデータを収集し,広島大学で開催の日本堆積学会で講演したほか,論文として公表した. 同地域の下総層群藪層の地質調査を行い,Scalichnus, Paradyctyodraなどの生物源堆積構造ならびにCaulostrepsis, Maeandropolydra, Oichnusをはじめとする生物浸食構造に関するあらたなデータを収集した.また,Caulostrepsisをはじめとした生物浸食構造の産出頻度が,浅海堆積場の古環境要因に応じて変化することを世界に先駆けて明らかにした.この結果は,現在,公表準備中である. 第三系田辺層群で野外調査を行い,世界各地の浅海堆積物において,生痕化石群集の主要な構成要素である生痕化石Schaubcylindrichnus coronusの形成メカニズムを論ずる上で大きな制約を与える,きわめて保存の良い化石標本を発見した.この生痕化石に関しては,日本古生物学会(北九州市立博物館)ならびに日本地質学会(大学)において,古生態に関する当時最新の知見を講演し,参加者らと議論をおこなった.この結果は,投稿準備中である. 現世波浪卓越海浜の生痕ファブリックを観察し,生痕化石Psilonichnus upsilonに同定可能なスナガニ類の巣穴形態と堆積場の微細環境との関連性を見いだした.また,波浪卓越海浜の前浜環境を特徴づける多毛類の摂食痕をわが国で初めて見いだし,論文として公表した.
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