研究概要 |
本年度は,アイスランド噴出物のLi-B-Pb同位体組成の時間変動を中心に解析を行うため、噴出年代に沿って系統的に採集を行った試料(約200試料,2001年夏に採集済み)に加え、2003年夏に3週間にわたって現地地質調査・試料採取(約350試料)を行った。薄片の光学顕微鏡による記載の結果、オリビン斑晶中には最大直径100m程度のガラス包有物が観察される試料の存在が、ピクライト質玄武岩中に確認された。また高分解能二次イオン質量分析計によるリチウム・ホウ素・鉛同位体測定法の改良として、従来より用いていたソレアイト質島弧玄武岩ガラスをマトリクスとする標準試料に加え、アイスランドなどの海洋島に普遍的に見られる玄武岩をマトリクスとする標準試料の作成を実施し、標準試料セットを確立した。この手法を用い、アイスランドマグマの物理化学進化のリファレンスとなるハワイの海洋島玄武岩に含まれるオリビン斑晶中のガラス包有物のリチウム・ホウ素・鉛同位体測定を行い、ガラス包有物中の同位体の変動が、全岩分析のそれよりもはるかに大きいことを明らかにした。これらの現象は、アイスランドやハワイの火山岩を形成するマントルプリュームの、地球化学的不均質を明瞭にあらわしている。各同位体間のシステマティクスを詳細に検討した結果、ガラス包有物中には、沈み込み帯において脱水反応に伴う同位体分別を起こしたリチウム・ホウ素同位体組成が観察されるとともに、ハワイにおいてHIMU的特徴を持つ包有物を発見した。このことはプリュームの地球化学的不均質の形成に関して、地球史を通じた物質循環が重要な役割を果たしたと考察できる。以上の成果は論文として国際誌に発表した。
|