研究概要 |
国立極地研究所南極隕石コレクションを中心として本研究に適する隕石を検討し,選定作業を行った。その結果,Asuka 881388(A881388),Asuka 881394(A881394),Asuka 87122(A87122),Piplia Kalanを選択した(いずれもユークライト)。これらの隕石に関しては,すでに研磨薄片が作製してあるため,光学顕微鏡(OM),走査型電子顕微鏡(SEM),電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で観察および化学組成分析を行い,以下のような結果が得られた。A881394は粗粒の集積岩ユークライトである。斜長石領域は長辺が2mm以上あり,それらは直径が0.1-0.44mmの丸みを帯びたより小さな結晶(最大で1×0.5mm)から成っている。これらの斜長石はユークライトとしては極めてAn成分に富んでいる(An97-98)。A87122は,大きさが2mm程度までの粗粒の輝石と斜長石の集合体である。斜長石のAn成分は88.1-94.2である。Piplia Kalanは他のユークライトに比べて斜長石中の包有物が大きく(5-10mm程度),その包有物は互いに離れたところに存在する。また,包有物が全くない領域も存在する。斜長石のAn成分は85-90である。これらの隕石は,その岩石鉱物学的特徴から^<26>Alの存在の痕跡を確認できると考えられる。当初,選択したA881388は,OMとSEMによる詳細な観察の結果,結晶質のユークライトではあるが,粒径が小さいため本研究の二次イオン質量分析(SIMS)による局所分析には適さないことが分かった。今後はSIMS分析のための標準物質の選定をした後,上に挙げた各試料の本測定に移る。
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