研究概要 |
国立極地研究所の南極隕石コレクションを中心として本研究に適する隕石を検討し,選定作業を行った。その結果,Asuka 881388(A881388),Asuka 881394(A881394),Asuka 87122(A87122),Piplia Kalanを選択した(いずれもユークライト)。これら'の隕石に関しては,すでに研磨薄片が作製してあるため,光学顕微鏡(OM),走査型電子顕微鏡(SEM),電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)による観察および化学組成分析を行い,以下のような結果が得られた。A881388,A87122,Piplia Kalanは,その岩石鉱物学的特徴から^<26>Alの存在の痕跡を確認できると考えられたが,A881388は,結晶質ではあるが,粒径が小さいため本研究の二次イオン質量分析法(SIMS)による局所分析には適さないことが分かった。SIMSを行うためには標準物質が必要となる。このため化学組成が均一であると考えられる斜長石としてフゴッペ産灰長石とスティルウオーター産灰長石を選択し,SIMS用研磨厚片試料を作製した。この厚片試料をOM, SEM, EPMAで観察および化学組成分析した結果,化学組成はAn99のほぼ均一な組成を持ち,SIMSの標準試料として適当であることが分かった。今回の測定においては,有意な^<26>Mgの過剰は検出できなかった。しかし,A881394についてはコンベンショナルな方法で(^<26>Al/^<27>Al)_0【approximately equal】1.18×10^<-6>という報告があり(Nyquist et al.,2003),これは,CAIの絶対年代を〜4567Ma,(^<26>Al/^<27>Al)_0を〜5×10^<-5>とすると〜4563Maに相当する。この結果から,ユークライト母天体(4ベスタ)は太陽系形成直後に集積し始め,数百万年以内に加熱・溶融して玄武岩質の火成岩が形成されたと考えられる。今後は局所分析による同位体比測定によってもこうした^<26>Mgの過剰が検出されると思われる。
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