研究課題
溶液内での化学反応を解析するために必要な大規模な系の分子軌道計算が可能な方法であるフラグメント分子軌道法(FMO法)について研究を行った。プログラムパッケージとしては、国立医薬品食品衛生研究所の中野らによって開発され、産業技術総合研究所の稲富らによって改良されたABINIT-MPを用いた。また分子動力学法(MD法)のプログラムは産業技術総合研究所の池上によって開発されたMDプログラムを用いた。これらのプログラムを用いてFMO法のMD計算における特性を調べるため、6残基のポリペプチド(ポリグリシン・ポリアラニン)を用いて、PM3、HF/STO-3G、HF/6-31G、FMO/STO-3G、FMO/6-31Gを用いた計算を行い、比較・検討をした。その結果、FMO法で得られたエネルギー及びエネルギー勾配は、従来のHF法を精度良く再現し、FMO-MD計算が実用的であることがわかり、その有用性を示した。また、FMO法を適用するための準備段階として、数十ナノメートルの水溶液中のヘキサン、及びペンタデカンの微小液滴の振舞を、力場関数に分子力学法(MM法)を用いた古典MD計算によって調べた。得られた結果より、液滴のサイズ依存性、単位セルのサイズ依存性などを調べ、液滴の特性を調べるために十分な系のサイズや条件を調べた。また、平らな界面との比較を行って液滴界面の特徴を調べた。それにより液滴においては、液滴の球形からの歪みによって、平らな界面よりも液準界面の厚さが大きいことがわかった。
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