進化的計算を利用し、パルス形や振動数成分について拘束条件が課された現実的な制御レーザーパルスの設計を行った。この際、進化的計算のアルゴリズムとして交差モデルとして拡張正規分布交差を、世代交代モデルとして最小世代間断裂モデルを採用している。また、ラムダ型3準位系における定常レーザー場を用いた分布制御について新たな機構を提案した。この際、電磁波を量子化することにより分子とレーザー場が強く結合した状態を「着衣の状態」として取り扱った。シュレディンガー方程式の解析解を求め、目的の終状態への遷移が最大になる様に強度、振動数等のレーザーパラメータを設計した。中間状態に緩和が存在する場合についても検討を行ったところ、緩和が小さい場合は準位分布の振動を規定している固有振動の位相をうまく合わせる様にレーザー強度と離調の関係を調整する方法が有用であることが分かった。一方で、緩和が大きい場合は、離調を十分大きくとり中間状態の分布を極力抑える手法が有効であった。一方、観測による波束の収縮を量子系の駆動力として捕らえることにより、新たな量子制御のスキームの構築を試みた。デコヒーレンスを能動的に起こさせる手段として量子系における観測操作に注目し、「位相をそろえる」というコヒーレント制御的な操作と「位相を破壊する」という観測操作をうまく組み合わせた新たな量子制御の可能性を提示した。この際、観測操作に対応する量子力学的演算子の定義、観測操作下における時間発展を記述する運動方程式の導出及び計算方法を確立した。構築した理論をラムダ型3準位系に適用したところ、観測が行われない場合に見られた準位分布の移動が観測によって誘起されたデコヒーレンス効果によって阻害されることが明らかになった。この結果は、観測操作を系に対する制御入力とみなす新たな量子制御の可能性を示唆している。
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