研究概要 |
1nm(〜40量体)以下の極微小サイズの金属クラスターは,バルク金属のスケーリングから逸脱した特異的な電子的・光学的・化学的性質を示すことから,次世代の機能性材料の構成単位として大きな注目を集めている.本年度の研究では,チオール単分子膜によって保護された金属クラスターを対象として,サイズ(組成)による分画技術や組成の精密評価方法の開発をすすめるとともに,これら有機無機複合系の基本特性を系統的に調べた.その結果,システインを含むトリペプチド,グルタチオン(GTR)分子に保護された金クラスター(AU:GTR)に対して,電気泳動を用いて原子レベルでの高分解能分離に成功するとともに,得られた一連の魔法数金クラスターについてその光学特性を明らかにすることが出来た.質量分析法を利用した構造評価から,魔法数Au:GTRクラスターはAu_<18>(GTR)_<11>,Au_<21>(GTR)_<12>,Au_<25±1>(GTR)_<14±1>,Au_<28>(GTR)_<16>,Au_<32>(GTR)_<18>,Au_<39>(GTR)_<23>の化学組成を持つことが分かった.裸の金クラスターの魔法数や他のチオール分子保護金クラスターの魔法数との比較から,Au:GTRクラスターではチオール単分子膜も含めた複合体全体の電子・幾何的安定性によって魔法数が決定されていることを見いだした.またこれらのAu:GTRクラスターでは金属的よりもむしろ分子的な電子構造を持ち,コアサイズの減少と共にHOMO-LUMOギャップが連続的に増大することを明らかにした.さらに,これらのAu:GTRクラスターは光励起により可視発光を示すことが分かり,サブナノメートルサイズにコアをもつAu:GTRクラスターでは,励起状態からの緩和過程として無放射過程と共に放射過程が競合していることを明らかにした.
|