研究概要 |
これまでにO-置換γ,δ-不飽和ケトオキシムに塩基存在下,Pd(0)を作用させるとHeck型反応(アミノ-Heck反応)が円滑に進行し,ピロール類を収率よく与えること,および,β-アルコキシ-γ,δ-不飽和ケトオキシムを用い,アンモニウムクロライド存在下同様な反応を行うと,ピリジンを主生成物として与えることがわかっている。本年度は,ピリジン類の選択的な合成法の開発を目指し検討を行った。その結果,β-アシルオキシ-γ,δ-不飽和ケトオキシムに,トルエン中120℃で、塩基存在下,Pd(0)を作用させると選択的にピリジンが得られることを見いだした。この反応はまず,アリルアシル部位がPd(0)と反応し,π-アリルパラジウムを経由して,ジエノンオキシムが生成する。こうして生じたオキシムが,Pd(0)と反応しピリジンを与えていると考えている。実際,反応系内ではジエノンオキシムが生成していることを確認しており,またジエノンオキシムを別途合成し,これに対してPd(II)を作用させたり,Pd錯体を加えないで単に加熱するだけではピリジンは得られず,Pd(0)を作用させた場合に環化が進行することを確認している。反手法により様々なβ-アシルオキシ-γ,δ-不飽和ケトオキシムから,2-置換,2,5-二置換ピリジンを合成できる。 また,オキシムを用いる求電子的アミノ化反応の検討を行い,2-イミダゾリジノンO-スルホニルオキシムがGrignard試薬の求電子的アミノ化試薬として優れていることを見いだした。さらに,2-イミダゾリジノンO-メトキシアセチルオキシムを用い,ルイス酸存在下,求核的な芳香族のアミノ化が進行することを明らかにした。
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