研究概要 |
光学活性2,2'-dibromo-1,1'-binaphthyl 1から光学活性触媒および配位子の有用な合成中間体として注目を集めている光学的に純粋な1,1'-binaphthyl-2,2'-dicarboxylic acid 2を得る新規合成法を開発し、さらに、2から2,2'-dicyano-1,1'-binaphthyl 3を得る新規合成法も開発した。いずれも、従来法では必要な有毒な試薬や多工程操作が不要な極めて実用的な合成法である。即ち、ジカルボン酸2は、1をジリチオ化した後にCO_2ガスと反応させことで得ることが出来る。また、2から3への変換は、カルボキシル基の1)塩素化、2)アミド化、3)脱水の3反応を経るが、one-pot操作が可能で、かつ、ほぼ定量的に3を得ることが出来る。また、2の合成研究途上、1のリチオ化剤にt-BuLiを用いると、n-BuLiを用いた場合に比べ収率が著しく向上するばかりでなく軸不斉が効果的に保持されることを明らかにした。ビナフチル化合物の軸不斉の立体保持は、2ばかりでなく他の光学活性ビナフチル化合物の合成にも応用可能であるため、今後の展開に興味が持たれる。 さらに、CpCo(CO)_2を触媒に用いたジニトリル体3とジインとの付加環化反応により光学的に純粋な2,2'-bis(pyridin-2-yl)-1,1'-binaphthyl 4を得る新規合成法を開発し、さらに、4のN-oxideがアリルトリクロロシランを用いる不斉アリル化反応の触媒として機能することを明らかにした。
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