研究概要 |
4位にスピロラクトン、スピロエーテル、スピロケトン環を有するシクロヘキサジエノンを合成し、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンとのDiels-Alder反応を行なった。スピロラクトン体,スピロエーテル体のDiels-Alder反応では温和は反応条件下でも反応が進行し、二種類の環化付加生成物が約9:1の割合で得られた。溶媒としてCH_2Cl_2,CH_3CN, CF_3CH_2OHを用い、この反応の面選択性、反応速度を比較したところ、面選択性の順はCH_2Cl_2,CF_3CH_2OH>CH_3CN、反応測度の順はCF_3CH_2OH>>CH_2Cl_2>CH_3CNであった。スピロケトン体はCH_2Cl_2,CH_3CN中ではほとんど反応は進行せず、面選択性もあまり良くなかった。溶媒としてCF_3CH_2OHを用いると反応は進行したが、面選択性はあまり良くなかった。これらの面選択性はCieplakモデルで説明できると考えている。 これらのDiels-Alder反応に関して非経験的分子軌道計算を行なったところ、反応で得られる主生成物は速度論的および熱力学的に安定な生成物であることがわかった。また、主生成物を与える遷移状態の双極子モーメントは副生成物を与えるものよりも小さいことがわかった。この遷移状態における双極子モーメントの大きさは溶媒による両選択性の違いに影響していると考えられる。 4位にスピロラクトン環を有するシクロヘキサジエノンから得られた環化付加生成物をScyphostatin親水性部分のモデル化合物として親水性部分類縁体への変換について検討した。環化付加生成物のエポキシ化反応により酸素官能基を導入した。そのエポキシドを開裂した後に逆Diels-Alder反応、カルボニル基の還元、エポキシ化反応、Swern酸化反応により親水性部分類縁体へと立体選択的に変換した。
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