FDCD法は、化合物の三次元構造に関する情報を追跡するのに非常に有効なCD法の一つで、CD法の特徴に高感度と高い選択制を付与できると期待されている。しかし実際は、応用例がほとんど報告されていないばかりか、これまで使われて来たFDCD測定装置は不完全であったため、測定によって得られる曲線は適用系によってはにせ信号が発生し、信頼性が低いものになっていた。報告者は昨年度、日本分光と共同で新しいFDCD測定装置を試作した。この新しいFDCD測定装置は、にせ信号を引き起こす異方性の解消と、集光効率の大幅な向上を同時に実現できる楕円鏡構造を持ち、従来のCD測定装置の試料台とそのまま交換するだけで信頼性の高いFDCD測定ができる一体型の付属装置とした。性能試験では、これまでの問題点を解消したものであることが確認されており、高性能と簡便性の両方を備えている。 本研究ではこの新しいFDCD付属装置をFDCD465と名付け、天然物の誘導体を含むいくつかの化合物に適用して従来モデルであるFDCD357およびFDCD405との直接比較を行い、楕円鏡型FDCD465が確かに実用的であることを示した。すなわちFDCD465は、これまでもっとも感度の高かったFDCD357よりもさらに2倍以上も感度が良く、にせ信号を唯一完全に回避できたFDCD405と同じ曲線を常に与え、このとき感度は20倍程度の向上を示した(投稿準備中)。また、FDCD465は単純な部品の組み合わせで高性能を発揮できるよう設計されており、現在は日本分光からの市販化が計画されている。
|