研究概要 |
ジエン-鉄錯体はジエン部位の保護、ジエン隣接部位での反応などの利用例が報告されているが、ジエン部位を直接反応に利用した例は数少ない。本研究では,ジエン-鉄錯体より生成できるメタロジエン-鉄錯体を利用する新規有機合成反応の開発を行っている。 ジエニルホスフェート-鉄錯体にLDAを作用させることで3位のリチオ化が進行することが明らかとなっているが,このリチオ化中間体は低温でのみ安定に存在するため、取り扱いが困難であること、さらに炭素求電子剤との反応性が低いことがわかっている。そこで本年度は,リチオ化中間体をホウ素化合物に交換することで空気や熱に対して安定なメタロジエン-鉄錯体としてボラジエン-鉄錯体合成を試みた。その結果,リチオ化中間体にトリメトキシボランを作用させ,さらにピナコールを作用させることで,目的とする安定なボラジェン-鉄錯体を56%の収率で得ることに成功した。 得られたボラジエン-鉄錯体を加水分解することでボロン酸とし,りん酸三カリウム、塩化銅、Pd触媒存在下ブロモベンゼンを作用させ,クロスカップリング反応(Suzuki反応)を試みたところ、3位にフェニル基が導入されたジエン-鉄錯体を68%の収率で得ることに成功した。また,用いるハロアリールのハロゲンの種類及び,銅塩の種類によって反応収率が大きく異なることが分かっており,今後検討を加える予定である。
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