小さなHOMO-LUMO差を持つ共役分子の合成とその性質の評価 1、小さなHOMO-LUMOギャップをもつ両性クォーターチオフェン誘導体の合成と性質 小さなHOMO-LUMOギャップを持つ分子を得るために、(CPDT)骨格をもつクォーターチオフェン誘導体を合成した。紫外-可視吸収スペクトルとサイクリックボルタモグラム(CV)を測定した結果、合成した分子が中性のポリチオフェンのバンドギャップ(2.1 eV)よりも小さなHOMO-LUMO差(1.03-1.97 eV)を持つこと、特徴的な多段階の酸化還元挙動を示すことを明らかにした。また、CPDT骨格を二量化すると、HOMOのエネルギーは大きく不安定化するが、LUMOのエネルギーにはほとんど影響を与えないことを示した。 2、クォーターチオフェン誘導体のジカチオンの合成と構造 定電流電解法によりクォーターチオフェン誘導体のジカチオン塩(FeCl_4塩)の作成、単離に成功した。また、ジカチオン塩の単結晶を作成しX線構造解析を行った。その結果より、ジカチオン状態ではCPDT骨格がキノイド型の構造をとっていることを明らかにした。これはオリゴチオフェンおよびその誘導体のジカチオンの単離、結晶構造構造を行ったはじめての例である。 3、オルトキノイド骨格を有するビチオフェン誘導体の合成と性質 ジケトン基で3、3'位を架橋したビチオフェン誘導体のα位に種々のヘテロ環を導入し、分子HOMO-LUMO差を制御した。紫外可視吸収スペクトル、CVの測定により、分子のHOMO-LUMO差、フロンティア軌道のエネルギー準位に対するヘテロ環導入の効果をしらべた。その結果、ヘテロ環の導入により分子のHOMO-LUMO差が小さくなること、ヘテロ環の効果は分子のHOMOの軌道を変化させるがLUMOの軌道には現れないことを明らかにした。
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