研究概要 |
ジャガイモシスト線虫の孵化促進物質であるSolanoeclepin Aの合成は、オキサビシクロ環部位と、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン部位とを組み合わせ、オレフィンメタセシス環化反応により分子骨格を構築するというconvergentな合成計画を立案した。これに従い、平成14年度はオキサビシクロ環部位の構築に着手した。当初の計画では、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジオンより導かれる2,2-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-オンに対して、Sharplessの不斉ジヒドロキシ化反応を用いる不斉点の導入を試みた。しかしながら、鏡像体純度がそれほど高くなかったことや、合成経路の各段階での収率がいまひとつ良くなかったこと(中間体のうちのいくつかが揮発性であるため)、さらには絶対立体配置の決定に困難が生じたため、合成ルートを変更することとした。より鏡像体純度の高い化合物の合成を目指し、D-Pantolactoneを出発原料とすることとした。D-Pantplactoneのヒドロキシル基の絶対立体配置がsolanoeclepin Aのものと同一であることから、これを足掛かりに不斉点を構築しようと考えた。D-Pantolactonからジメチルシクロヘキサン環を構築し、その後分子内エーテル化反応を施すことによりオキサビシクロ環部位の構築を行い、重要中間体であるsolanoecrepin Aの分子左側に相当する環化前駆体へと導いた。
|