研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は生体内で不要になったヘムの分解を行う酵素であり、その特異な反応のメカニズムに興味が持たれている。平成14年度は、HO反応の第1段階(αメソ位の水酸化)の機構について集中的に研究を行った。 メソ位水酸化の活性種はヒドロパーオキシ種(Fe-OOH)と考えられているが、compound I (オキソ鉄四価ポルフィリンラジカル)が活性種となる可能性も否定しきれていない。そこで、HOによるヘム、分解反応へのcompound I の関与を検討した。鉄三価ヘム-HO複合体とm-クロロ過安息香酸との反応を行ったところ、HOのcompound I を観測することに初めて成功し、compound I からはメソ位の水酸化が起きないことを直接確認した。この結果、compound I がヘム分解の活性種となる可能性は「完全に」否定され、メソ位の水酸化はFe-OOHのO-O結合開裂と協奏的に進行すると結論づけられた。 次に、メソ位の協奏的水酸化機構を解明するために、ヘム2,4位の側鎖をビニル基からエチル、アセチル基に置換したヘムを合成し、HOによるメソ位水酸化反応への置換基効果を検討した。過酸化水素によるヘム分解反応を詳細に検討した結果、メソ位水酸化は電子吸引性置換基により促進されることが示唆された。この結果は、Fe-OOHがメソ位炭素を求核的に攻撃することを示しており、従来提案されていた求電子反応とは逆の機構である。今後、低温下でFe-OOHを調製して水酸化速度を直接測定しFe-OOHの反応様式を決定する実験を行う予定である。
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