研究概要 |
1.鎖状錯体の磁気的性質 おおきなスピン基底状態を有する多核金属錯体(マイクロスピン系金属錯体)の一つである直線状Mn^<III>Mn^<II>Mn^<III>三核錯体[Mn{Mn(L)(carboxylato)(OCH_3)}_2](H_2L=N,N-bis(2-hydroxybenzyl)-N',N'-dimethylethylenediamine)のカルボキシラト配位子部分をテレフタレート(tpa=C_6H_4(COO^-)_2)で置き換えた鎖状錯体[Mn{Mn(L)(OCH_3)}_2(tpa)]を合成し、その磁気的性質について検討した。Mn^<III>Mn^<II>Mn^<III>三核錯体の大部分が強磁性的相互作用を示すのに対し、これを一次元に連結した錯体では反強磁性的相互作用が現れることが明らかとなった。 2.キサンテン骨格で架橋されたビス(サリチルアルデヒド)の合成 二分子のサリチルアルデヒドを9,9-dimethylxantheneの4位と5位で連結したキサンテン架橋ビス(サリチルアルデヒド)を合成した。このビス(サリチルアルデヒド)は、アミン類との脱水縮合反応によりシッフ塩基とすることで、様々な二核化配位子を合成することができるため、きわめて拡張性の高い化合物である。また、9,9-dimethylxantheneの4位と5位の炭素間の距離は約4.7Åであるため、キサンテン架橋ビス(サリチルアルデヒド)から誘導される二核金属錯体では、金属間距離を4〜5Å程度に固定することができると考えられる。 3.シッフ塩基二量体配位子の合成 キサンテン架橋ビス(サリチルアルデヒド)と1,2-phenylenediamineとの反応により、環状構造を有するシッフ塩基二量体配位子を合成した。この配位子から誘導される二核金属錯体は、約4×14Åのナノサイズの空間を有することが期待される。
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