研究概要 |
本年度は標的化合物を得るための合成法の確立を目指して研究を行った。目標とする対面置換型フタロシアニンの基礎データを得るため、置換基としてt-ブチルフェニル基を導入した低対称置換型フタロシアニン錯体の合成を試みた。まず、原料となる3,6-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フタロニトリルを2,3-ジシアノヒドロキノンから合成する方法を確立した。この原料とp-t-ブチルフェニルボロン酸との反応を試み、目的の3,6-ジ(4'-t-ブチルフェニル)フタロニトリルを合成した。これを用いて無置換のフタロニトリルとの混合縮合によるフタロシアニン錯体の合成を試みたところ、生成したフタロシアニンは溶解度が高く、カラムクロマトグラフィーによる分離が可能となった。質量分析により、生成しうる置換基の数の異なるほとんどの生成物を確認することに成功した。また、無置換のフタロニトリルの代わりに集積化に適した4,5-ジ(メトキシフェニル)フタロニトリルを用いて同様の反応を試みたところ、目的とする対面型の他に隣接型の異性体が得られた。生成および異性体の同定はMALDI-TOF/MSおよびNMRによって行った。興味深いことに、無置換の原料を用いて得られた四置換体(対面・隣接)とメトキシフェニル基を導入して得られた四置換体(対面・隣接)では、それぞれの組み合わせにおける酸化還元挙動が逆転するという現象が明らかとなった。現在この原因について検討中である。また今後、メトキシフェニル基を導入した対面型について大量合成を進め、加水分解によって目的の化合物を合成していく予定である。
|