研究概要 |
これまで、本研究者は、疎水鎖にジアセチレン、親水末端にボロン酸を有する重合性両親媒性分子(1)と、ジアセチレン部位とカルボン酸を有する重合性両親媒性分子の混合水面単分子膜を糖誘導体の水溶液上で重合することにより、糖誘導体に対する親和性が向上した単分子膜を調製することに成功した(二次元分子鋳型法)。また、疎水鎖にポリエンであるカロチノイドを有し、親水末端にボロン酸を有するカロチノイド型両親媒性分子(2)を単分子膜に組み込むことにより、単分子膜に電気伝導性を付与できることもすでに報告している(電気伝導性LB膜)。 本年度は、この2つの知見を組み合わせることにより糖化学センサーの構築を試みた。単分子膜表面のボロン酸の希釈剤として、疎水鎖にジアセチレン、親水末端にフェノールを有する重合性両親媒性分子(3)を合成し、様々な混合比で1,2,3の混合単分子膜を、鋳型である糖誘導体ニトロフェニルマンノサイド(4)の存在下または非存在下で調整した。調製した単分子膜は疎水化した金基板上に累積し、電極とした。いずれの混合比の単分子膜も、ヨウ素をドープする前は電気伝導性を示さず、4のCV測定において酸化還元ピークは観察されなかったが、ヨウ素ドープにより可逆的な酸化還元応答が観察された。この電極上ではフェロシアン化カリウムの酸化還元反応が認められないこと、また、還元ピーク電流が表面ボロン酸密度とともなって増加したことから、4の酸化還元反応は、表面ボロン酸と4の糖部位との分子認識を介して逃行していることが示された。1:2=10:1の修飾電極を用いて測定した4の還元ピーク電流値は、膜調製時の鋳型分子4の有無に影響されず、ほぼ同じ値であった。一方、1:2:3=5:1:5の修飾電極の場合、4存在下で調整した電極では、非存在下に比べて還元ピーク電流の向上が認められた。フェノールで表面のボロン酸の密度を希釈することにより、鋳型効果が発現したためと考えられる。
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