研究概要 |
近年,飛躍的に増大する情報量を高速に処理できる次世代技術として光で光を処理するフォトニクスが注目されている。フォトニクスでは,光を流す(導波),分ける(分波),合わせる(合波),切り替える(スイッチング)といったさまざまな機能を有する素子を小型かつ安価に作製し,それらを巧みに組み上げる必要がある。空間的な屈折率分布を制御することで,導波,分波,合波が,時間的に屈折率を変化すればスイッチングが可能となる。スイッチング素子としては光感度が高く,屈折率変化が大きいことが望ましい。本研究では,ホログラフィーを利用して高分子アゾベンゼン液晶の周期構造体を簡便な方法で作製し,高感度高屈折率変化型の光スイッチング素子への応用を検討した。特に本年度では,メタクリル酸メチルおよび液晶モノマーの光重合を行った。また,過渡回折格子法によりモノマーの光重合挙動について調べた。2本に分けたアルゴンイオンレーザーの波長488nmの光を,モノマーを封入したセル内で干渉させることで周期的な光重合を誘起した。プローブ光のヘリウムネオンレーザーの波長633nmの光の1次回折光強度を測定し,回折格子形成挙動を追跡した。488nmのレーザー光を照射したところ,回折光が発生し光強度が増加することがわかった。干渉縞明部でのみ重合が進行する結果,周期的な屈折率差が生じ回折格子が形成すると考えている。実際,未反応モノマーをメタノールで洗浄し,セルの顕微鏡観察を行ったところ,高分子周期構造体の形成が明らかとなった。
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