本研究では光圧によるナノ粒子光捕捉技術と、高感度蛍光分光測定を組み合わせ、高分子コロイドの結晶化・会合プロセスを一粒子・一分子レベルでその初期段階から追跡し、そのメカニズム解明を目指している。本年度の主な研究成果を以下に挙げる。 (1)倒立型顕微鏡にアバランシェフォトダイオードと精密自動ステージを組み込み、制御計測プログラムを自作して共焦点顕微蛍光分光システムを開発した。光源として近赤外YAGレーザー光と青色ダイオードレーザー光を導入し、ナノ粒子の光捕捉と、200nmの空間分解能で単一分子レベルの高感度蛍光分光測定を一つのシステムで可能にした。 (2)集光スポット内に捕捉されたコロイド粒子の集合状態を調べるためのモデル系として金コロイドを取り上げ、光捕捉時の吸収スペクトルを測定した。その結果、スペクトル形状がレーザー強度に強く依存することを明らかにし、光圧によって集光スポット内におけるコロイドの濃度、集合状態を制御できることを証明した。この研究成果は第63回応用物理学会学術討論会、第55回コロイドおよび界面化学討論会において発表した。さらにこの光捕捉技術と紫外パルスレーザーによる光熱反応を利用して、直径80nmの金コロイドを一粒づつ光捕捉し、基板上の任意の場所に固定化する手法を開発した。この研究成果はApplied Physics Letters誌に掲載された。 (3)高分子コロイドとしてワイヤー型デンドリマーのテトラヒドロフラン溶液を取り上げ、そのゲル状集合体の体積を光捕捉により可逆的に制御することに成功した。蛍光分光測定を同時に行い、体積変化に伴う分子構造の変化も突き止めた。この研究成果はThe Journal of Physical Chemistry誌に掲載された。
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