本研究では光圧によるナノ粒子光捕捉技術と、高感度蛍光分光測定を組み合わせ、高分子コロイドの結晶化・会合プロセスを一粒子・一分子レベルでその初期段階から追跡し、そのメカニズム解明を目指している。本年度の主な研究成果を以下に挙げる。 1、ガラス基板上に展開した高分子溶液の溶媒蒸発過程にレーザー光を集光すると、液膜の厚さ、溶液濃度、基板と集光スポットの距離などに依存して、大きさ、形状の異なる高分子会合体がガラス基板上のレーザー照射位置に局所的に形成される新しい現象を見出した。昨年度開発した共焦点蛍光分光システムを用いて、1分子レベルで蛍光解析を行った結果、溶媒の蒸発に伴い溶液中に形成されたゲル状の高分子会合体が、光圧により集光位置に集められ、基板上に会合体を形成すると考察し、第64回応用物理学会学術討論会において研究成果を発表した。現在、高分子や生体分子を基板上の任意の位置にサブミクロンの大きさで配列させる新技術として確立するため、メカニズムの解明に取り組んでいる。 2、ワイヤー型デンドリマーのゲル状集合体を光捕捉により作製、さらにその体積を可逆的に制御することに成功し、その研究成果を昨年度The Journal of Physical Chemistry誌に発表したが、さらに同分子の会合体の蛍光特性を詳細に解析し、The Journal of Physical Chemistry誌に発表した。 3、光捕捉を用いて金コロイド、高分子コロイドを一粒づつ、基板上の任意の位置に配列、固定化する技術の開発に引き続き取り組み、それらの成果をまとめてアメリカ・カリフォルニアで開かれたSPIE学会で報告し、Proceedings of SPIE誌に発表した。 4、光捕捉により作製される高分子コロイド集合体の形成プロセスを2光子励起蛍光を利用した単一粒子計測により解析し、粒径40nmのコロイドにおいてレーザー強度に依存した特長的な会合プロセスを見出し、第56回コロイドおよび界面化学討論会で報告した。
|