機能の宝庫とも言われるペロブスカイト関連化合物とジアセチレン誘導体の結晶内重合反応とを組み合わせることにより、新たな機能性物質の構築を検討した。ペロブスカイト構造を構築する無機化合物として2次元強磁性体となることが知られている塩化銅を選択した。塩素の選択は結晶内重合反応の分子配列を満足させやすいと考えたからである。インターカレイトするためにはアンモニウム塩をなることが必要であるため、原料としてアミノ基を有するジアセチレン誘導体を合成し、モノマーをまずインターカレイトし、その後で重合させるという手法を試みた。 アセチレンのカシプリング反応の条件のため、アミノ基を有するジアセチレン誘導体の合成は難しい。そのためシアノ基を有するジアセチレン誘導体をまず合成、そして還元反応によりアミノ基に変換した。このアミノ基をアセチル基で保護した後、アセチレン部位の酸化的カップリング反応を行いジアセチレン誘導体へとし、対称型および非対称型の2種類の誘導体を合成した。これらを脱保護し、アミノ基を有する新規ジアセチレン誘導体を合成した。次にこれらに塩酸を作用させ、アンモニウム塩へと変換し、塩化銅との錯形成反応を行ったところ非対称の誘導体において黄色の板状結晶が得られた。赤外吸収スペクトルからもジアセチレン誘導体と塩化銅との錯形成が確認された。この結晶は室温に放置すると徐々に赤色に変化していく。これはインターカレイトされたジアセチレン誘導体の結晶内重合反応に起因するものと考えちれる。
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