研究概要 |
天然色素アントシアニン類の基本骨格であるフラビリウム塩は結晶化の条件によって,黄,緑,赤の3種類の状態をとり,これらの色の状態は溶媒極性,濃度,水等の条件に依存することが当研究室の研究で明らかになった.しかし,フラビリウム塩は溶液中では不安定であるため,ポリマー中にドープして固定化することにより安定化させることを試みた.今年度は二つの方法で行なっている.(1)シリコンアルコキシドのゲル中にドーピングする方法,(2)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いた化学修飾によるドーピングである. (1)シリコンアルコキシドのゲル中へのドーピング アルコキシシランを用いたゲル化反応を用いて,ゲル中にフラビリウム塩をドーピングすることを試みた.p-ヒドロキシグラビリウム過塩素酸塩を合成し,シリコンアルコキシドのゾルゲル反応過程での色の変化を観測した. エタノール溶液中では,時間の経過とともに550nm付近の吸収の増加が観測された.無置換のフラビリウム塩の結果と1/10に希釈した溶液ではこのような現象が観測されていないことから,この吸収は二量体によるものと推測される.ゾル溶液中では,時間の経過とともに550nm付近の吸収が減少し,新たに625nmの吸収が増加することがわかった.さらにゲル化が進行すると,625nmの吸収強度が増加した.この新しい吸収はTEOS-エタノール混合溶液でも観測されており,電荷移動吸収帯と推測される.(光化学討論会2002(京都)で発表) (2)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いた化学修飾によるドーピング 比較的容易に使うことができるポリマーとしてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて化学修飾を行なっている.現在,目的の化合物が少量ではあるが,合成され,研究を継続中である.平成15年度の学会でその光物理化学について発表する予定である.
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