研究概要 |
まず4,4-dimethyl-2-(o-tolyl) oxazolineのリチオ化について検討した。その結果、sec-BuLi/Et_2Oの系で反応を行うと側鎖メチル基上もっぱらリチオ化されるのに対し、sec-BuLi/Et_2O/TMEDAの系で反応を行うと芳香環上のオキサゾリニル基のオルト位のプロトンが選択的にリチオ化されることを見出した[Tetrahedron Lett.,43(50),9069(2002).]。この反応を利用することにより生成した4,4-dimethyl-2-(o-tolyl) oxazolineのリチオ体は各種求電子試剤と反応させることにより容易にカルボキシル基のオルト位に置換基を持つ安息香酸誘導体が合成可能となる。このようにして合成した種々の安息香酸誘導体と光学活性フェロセニルアルキルアミンとを組み合わせることにより新規不斉配位子を合成し、触媒反応へ展開する予定である。 また一方で、フェロセンと類似の構造を有するアザフェロセンの面不斉導入を伴うエナンチオ選択的リチオ化反応について検討した。その結果、1',2,2',3',4',5,5'-heptamethylazaferroceneを基質に用い、光学活性ビスオキサゾリン配位子の存在下、sec-BuLiで反応を行うと、99%のエナンチオ選択性でリチオ化が進行することを見出した。また、生成したアザフェロセンのリチオ体に対し、求電子試剤を反応させることにより対応する官能化体が得られることも明らかにした[日本化学会第83春季年会,4H7-03(2003)]。これについては来年度(2003年)中に学術雑誌へ投稿する予定である。またこのアザフェロセンを利用して、不斉配位子ヘの展開を行う予定である。さらにこれまでに開発してきたフェロセン系の配位子との構造の相違による不斉誘起能の違いについても考察を行う予定である。
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