1.アビジン/キチン膜被覆電極によるビオチン誘導体のボルタンメトリー的挙動:天然多糖類の一つであるキチンは生体内で起こる反応に対して悪影響を与えることが少ないと言われている。このような生体高分子を介してタンパク質とそれに結合するリガントとの相互作用を評価することは、生体の機能を明らかにするために役立つものである。本研究では、そのモデルとしてアビジン-ビオチン間結合について着目した。その手法は、グラッシーカーボン電極をキチン膜で被覆し、ストレプトアビジン(等電点が5)をプロトン化したキチンのアセチルアミド基との静電的相互作用により固定化した。膜表面におけるアビジン-ビオチン間結合を電極活性物質でラベル化したビオチン誘導体を用いることで、その電極応答の変化からモニタリングすることができた。一方、等電点が10〜10.5のアビジンにおいては、キチン膜への静電的固定化が不十分であるためストレプトアビジンとは異なる挙動をとった。 2.グルコースオキシダーゼ/ケラチン修飾カーボンペースト電極によるグルコースのセンシング:硬タンパク質として知られるケラチン表面へのグルコースオキシダーゼの固定化を試みた。タンパク質の架橋剤であるグルタルアルデヒドについての検討を行ったところ、グルタルアルデヒドを用いない場合において高い固定化率を示すことがわった。すなわち、酵素はケラチンのアミノ基との架橋によらず、プロトン化しているケラチンの官能基との相互作用により固定化されたものと考えられる。酵素被覆ケラチン粉末と白金粉末を修飾剤としたカーボンペースト電極では、10^<-5>Mレベルのグルコースの検出の可能であった。それゆえ、グルコースセンサとしての応用が期待される。
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