研究概要 |
8-ヒドロキシキノリンが配位した不完全キュバン型硫黄架橋モリブデン錯体(多核錯体)の合成に成功し、X線構造解析によりその構造を決定、さらにDV-Xα分子軌道法によりその電子状態を計算した。合成法は、水溶液中のアクア多核錯体を8-ヒドロキシキノリンで有機溶媒層にキレート抽出する方法、アクア多核錯体水溶液に8-ヒドロキシキノリンを加えて沈殿させる方法、有機溶媒にアクア多核錯体結晶と8-ヒドロキシキノリンを加える方法の3通りを開発した。8-ヒドロキシキノリン誘導体についても研究を進め、5-クロロ-8-ヒドロキシキノリン錯体および5-フルオロ-8-ヒドロキシキノリン錯体の合成に成功し、X線構造を決定した。また8-メルカプトキノリン、7-n-プロピル-8-ヒドロキシキノリン、5,7-ジメチル-8-ヒドロキシキノリン、2-メチル-8-ヒドロキシキノリン、5-7-ジブロモ-8-ヒドロキシキノリン、5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシキノリン、5-クロロ-7-ヨード-8-ヒドロキシキノリンについても、水溶液中のアクア多核錯体と反応して錯体が有機溶媒層にキレート抽出されることを確認した。不完全キュバン型骨格の4つある架橋原子については、硫黄4つの錯体以外に、酸素3つ硫黄1つの錯体および酸素1つ硫黄3つの錯体についても8-ヒドロキシキノリン配位錯体の合成に成功し、X線構造を決定した。さらに酸素1つ硫黄3つの錯体をカルボキシ基を有する有機分子(例えば、安息香酸、サリチル酸、トリフェニル酢酸)と反応させ、単結晶を得てX線構造を決定した。酸素1つ硫黄3つの錯体は、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、アラキドン酸とも反応することを確認しているが、それらの反応の生成物は、まだ良い単結晶としては得られていない。本研究で得たいくつかの新規錯体ついて蛍光を測定したところ、可視部に蛍光を発することを確認した。
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