本課題推進の一環として、遺伝子の進化的背景を知り、機能単位がどのように進化し機能を持ったり変化させたりしてきたかに焦点を当てた研究を行った。この中で、分子進化解析を行う上で重要な基礎となることを目指し、多数の遺伝子を基にした標準化遺伝子系統樹作成方法の開発を行った。これは長期の分子進化を見たとき遺伝子は「分子時計」と呼ばれる、時間軸に沿った変化を蓄積してゆく現象が知られていること、および特定時期における遺伝子進化の速度が、必ずしも一定でないことに対応したものである。ここでいう特定時期は遺伝子が新たな機能を獲得するなどして、生物そのもののあり方に影響を与えたような時期であり「正の自然淘汰を受けた」時期である。分子進化学的研究から、このような時期には遺伝子の進化速度が加速することが知られており、これを検出することで機能的進化を見出すことができると考えられるが、遺伝子進化の速度は一定でなく速度の加速は相対的なものなので、基準値の存在が重要となる。今年度の研究はこの部分に焦点を絞ったものである。この成果は本年度発表の各学会、及び現在受理されている論文4にて発表した。このほかハーバード大学ギルバート教授らとエクソン混成説に関する共同研究の成果を論文1にて、イネゲノムプロジェクトの成果を論文2にて発表した。
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