研究概要 |
本研究では、サンゴ幼生の供給源・加入先を明らかにするため、異なる卵特性を持つ優占種について1.室内実験により幼生の定着期間と定着率を調べ、分散可能な日数と最適な加入時期を明らかにし、2.親群体の遺伝子流の解析により個体群の関係を実証することを目的としている。対象海域は主として、琉球列島慶良間列島-沖縄本島とした。 本年度は、サンゴ礁に優占するサンゴ(放卵放精型,ハナガサミドリイシAcropora tenuis ;保育型,アオサンゴHeliopora coerulea,およびハナヤサイサンゴPocillopora damicornis)を対象にサンゴ幼生の定着能力の時系列変化を明らかにした。実験は、阿嘉島臨海研究所および西海区水産研究所石垣支所にて行い、幼生を水温・光量を定にした環境で飼育し、数日おきに最低30日間、定着実験を行った。放卵放精型のハナガサミドリイシの幼生は、受精後3日目より定着がみられ、定着率は10日目にピークとなり、その後減少した。一方、保育型サンゴ幼生は、放出後1時間より定着を開始し、24時間まではアオサンゴでより定着が早い傾向があった。放出後21日目にはアオサンゴ幼生は3%しか定着しなかったが、ハナヤサイサンゴでは60%以上が定着した。これらより、種類によって定着の最適な期間が異なり、加入範囲が異なると推定できる。また、遺伝子解析に関しては、本年度はハナガサミドリイシおよびアオサンゴの親個体および幼生を採集し、現在、分析を進めているところである。
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