研究概要 |
保全生物学で必ず壁として立ちはだかる「生態系保全か経済利益(あるいは健康被害予防)か」という対立を捉えていくための評価方法の一つとして「生態リスク・ベネフィット解析」の推定方法を確立させることが本研究課題の最終目的である。具体的な例としてDDTによる生態系被害とマラリア予防を考えている。 1,平成15年度:平成14年度行った研究であるDDTの生態リスク解析の論文が雑誌に掲載された。平成15年8月にはデンマーク、ロスキルデでSociety of Environmental Toxicology and Chemistry USAの開催したPellston Workshop on Populafion-Level Ecological Risk Assessmentに招待された。そこでは集団レベルでの生態リスク解析に関してアメリカ合衆国やヨーロッパの研究者と話し合いを行った。DDTによる絶滅リスクを生息地破壊量に換算する「リスク等量」というアイディアは新しい手法として海外の研究者や政策担当者等にも非常に好評であった。この話し合いの内容は近々書籍として出版され、共著者として名を連ねる。 2,生態リスク・ベネフィット解析のためにはDDTの代替品を考え、代替品に変えた時の生態リスクの増加と経済コストの増加を計算する。そのためにこの2年間は代替品に関する文献調査を行ってきた。WWFやWHOはピレスロイド(合成除虫菊)入りの蚊帳を推奨しているため、これに関する経済費用に関するデータは揃うと思われる。また、ピレスロイドは水系生物以外では被害がないと言われているため、プレスロイド入り蚊帳をDDTの代替品の一つとして考える。一方で蚊帳は人の活動範囲を狭めるなどの欠点もあるため、他の代替品も探していきたい。 3,最終年度は今まで収集したデータを元に経済便益分析を行い、生態リスク・ベネフィット解析を完成させ、論文に仕上げる。
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