研究概要 |
本年度は,実際にサルを追跡しながらその位置の測定を行い,データの収集を行った。 ニホンザルの成体メスを対象に,複数の観察者が個体を追跡し,その位置を記録した。ただし、発情したメスは、群れから離れることがあると言われているので、対象から除外した。同時に追跡する対象個体は,血縁関係の有無を考慮して選択した。また,異なる季節に調査を行い,それによって個体間距離が変化するかどうかを検証した。 ニホンザルは血縁個体同士の社会的交渉が多く,血縁個体同士が近接していると言われている。今回は,より大きなスケールで測定してみても,やはり,血縁個体同士は近接している傾向が見られた。また,季節によっても,個体間距離が異なっていた。秋は,個体間距離が狭く,冬には広くなる傾向が見られた。秋には比較的質の良い食べ物が集中していることと,発情した成体オスによる攻撃が多くなるため,メス同士が集まっていることが関連していると考えられた。一方、冬は、質の低い食べ物が分散しているため、群れが散するのではないかと考えられた。 群れが集合したり広がったりする、動的なパターンを分析すると、大きな採食パッチや、休憩場所で集合し、移動が開始されると広がる傾向が示唆された。今後、このような、動的な群れの集合性のパターンを解析し、ニホンザルがどのようなコンテキストで集合したり、分散したりするのかを解析していくことで、群れの凝集や分散のメカニズムがより明らかになるのではないかと考えている。
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