平成15年度は主に以下の2点に注目した研究を行った。 1ホスト・パラサイト系におけるパラサイトの探索効率の進化モデル解析 ホスト・パラサイトの群集動態において、パラサイトの探索効率が高くなると安定平衡点が不安定化し周期解が出現する事は古典モデルの解析で既に明らかになっている。本研究ではパラサイト集団中に探索効率に関する集団内変異が存在すると仮定した場合、探索効率の進化が個体群動態に及ぼす影響について解析した。興味深い事に、集団内変異が存在する事により、ホストとパラサイトの個体群動態が安定する事を見いだした。今後は個体群動態安定化のメカニズムを解析的に調べていくつもりである。 2連続ニッチ上の被食者・捕食者個体群動態モデル解析 仮想的な1次元連続ニッチ上の被食者・捕食者の個体群動態モデル解析を行った。被食者は連続ニッチ上の資源分布関数を消費してロジスティック増殖を行う。被食者の種間競争係数として、ニッチの差の減少関数を与えた。この被食者のダイナミクスは最終的に連続ニッチ上に離散的に分布することが他研究によって明らかにされている。本研究はこの系に被食者を捕食する捕食者を導入した。捕食者の捕食効率をニッチの差の減少関数として与えた結果、以下の結果を得た。1)最終的には被食者・捕食者ともに連続ニッチ上で離散分布を示す。2)パラメータ値に依存して、捕食者が存在した方が、離散分布のピーク数が、被食者・捕食者ともに増加した。これは、捕食者の存在により系の多様性が保たれる事を示している。本研究は数値解析によるものだが、来年度は解析的な取り扱いに取り組む予定である。
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