a)各海岸の底生生物の群集構造 (1)文明(1471-76年)、安永(1779年)、大正(1914年)、昭和(1946年)の噴火によって形成された転石海岸を各2カ所ずつ、計8海岸を選び、3ヶ月ごとに潮間帯の底生生物の種組成や現存量を比較する調査を継続した。その結果、各海岸間の底生生物の群集組成の変異は、海岸内の変異より大きかったが、海岸の成立年代との関連は見いだせなかった。 b)動植物プランクトンの現存量の海岸間差とその季節変化 (1)動物プランクトンは、各海岸の沿岸で3ヶ月ごとにプランクトンネットをひいて採集し、海水ホルマリン固定した。現在試料を分析中であるが、同定困難な種が見られるため、専門家に同定を依頼している。 (2)植物プランクトンについては、海水を濾過したものを保存液中で冷凍保存し、クロロフィルaを測定して現存量を算出した。夏までの標本について解析したところ、海岸間変異、季節変動ともに著しいことが分かった。植物プランクトンの現存量は約2週間周期で変動を繰り返すとされているため、1ヶ月ごとの調査では変異のパターンをとらえるには至らなかった。 c)水質環境の海岸間差とその季節変化 (1)各海岸で毎月水温と塩分濃度を測定したところ、水温に関して海岸間変異は少なかったが、塩分濃度には大きな海岸間変異が見られた。特に夏期の変異が大きかったことから、梅雨の影響ではなく、台風による降雨の影響があったものと考えられる。 (2)各海岸で毎月栄養塩濃度を測定したところ、アンモニア及び硝酸一亜硝酸体窒素の濃度は海岸間で大きく異なっていた。リンの濃度は海岸間での変異が少なく、また全体的に低濃度で推移した。 d)未同定種の標本及び文献調査 (1)平成14年度の調査で種が同定できなかった種について、標本と文献調査を行ったところ、藻類と節足動物数種について、種名が明らかになった。
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