幼生の供給量や海水の無機的環境と基質の地質学的性質が、潮間帯底生生物群集の構造決定に果たす相対的投割を明らかにするため、数回に渡る桜島の大噴火によって形成され、成立年代の異なる溶岩性の海岸を各2カ所ずつ選んで、以下の調査を行った。 a)各海岸の底生生物の群集構造 各海岸において、3ヶ月ごとに底生生物の種組成と現存量の調査を行い、各海岸の底生生物群集構造の特徴を明らかにした。海岸間の変異が大きく、種数にして2倍近く、個体数にして7倍の格差が見られた。 b)植物プランクトンの現存量の海岸間差とその季節変化 c)水質環境の海岸間差とその季節変化 各海岸で毎月、植物プランクトンを採集してクロロフィル量を測定するとともに、海水中の栄養塩濃度を計測したところ、季節を問わず両者の間に一定の相関があることが明らかになった。 d)底生動物の幼生加入量の海岸間差 各海岸の幼生加入量を明らかにするため、着底板を設置し、一ヶ月後実験室に持ち帰って実体顕微鏡下で観察したが、着底を確認することはできなかつた。接写したデジタルカメラの映像から、着底直後個体数を算出できることが分かったため、現在解析中である。 これまでの調査結果は、a)を中心に論文(桜島転石海岸の潮間帯における貝類群集と環境要因の関係)にまとめ、日本貝類学会誌に投稿中である。
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