現在、日本の都市部において、在来タンポポが減少し、それに代わるように外来タンポポが勢力を拡大してきている。「タンポポ競争」と呼ばれるこの現象の原因を探るため送粉生態学的見地から独自の仮説:「送粉者を介した在来・外来タンポポ間の種間競争」仮説をたて、この仮説を検証するために実験を行った。 1:野外において人工的に在来種の純群落と外来種の純群落を作出し、1頭花あたり訪花頻度を比較した。その結果、4群落すべてで外来種は在来種よりも多くの訪花昆虫を集めた。 2:在来種純群落と在来種・外来種混群落で在来種に対する訪花頻度を比較した。その結果、2群落間で在来種に対する訪花頻度はほとんど変わらず、混群落において外来種が在来種から訪花昆虫を奪っているのではないかという仮説は棄却された。 3:在来種と外来種の混群落において、訪花昆虫の株間移動訪花パターンを観察した。その結果、主な訪花昆虫はランダム訪花よりもさらに在来種から在来種への訪花移動が少なく、在来種どおしの正常な送粉が想像以上に妨げられていることが示唆された。 4:自然生息地における在来種の純群落と混群落、および野外に人工的に作出した在来種純群落と混群落において在来種の結実率を比較した。その結果、すべてのケースにおいて混群落における結実率は純群落のそれよりも有意に低かった。これは在来種が外来種と混生すると、外来種から被害を受け種子生産性が落ちることを意味する。 以上の結果より以下の結論が導かれる。在来タンポポは外来タンポポ混生すると、結実率を減少させる。その原因は、外来タンポポに訪花昆虫を奪われて送粉頻度が減少するためではなく、送粉昆虫の頻繁な種間移動によって花粉が無駄になったり、異種の花粉が正常な種内送粉の妨げになるためと考えられた。
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